愛媛が好きですか。ずっと愛媛で暮らしたいですか。
「愛媛はいいところ」ってよく聞くけれど、愛媛の魅力って何でしょう?
生まれ育ったまちや都会を離れて、愛媛へ移住した人たちがいます。
愛媛だからこそ実現できる夢に向かって挑戦しています。
移住者の目線で見た愛媛の姿や愛媛の良さについて、
県内の自治体で地域おこし協力隊員として活動してきた2人に聞きました。
(この記事の内容は2022年12月取材時点のものです。)
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「四国最西端の町」をもっと楽しもう
イベント会場などに出店する「けんちゃんたこ焼き」は、行列ができる人気店。おしゃべりしながらせっせと焼くのは、伊方町地域おこし協力隊の田中健介さん(28)。テント出店から始め、今ではキッチンカースタイルであちこちに出向いています。2年前に大阪から移住した田中さんは、亀ヶ池温泉公園キャンプ場の運営・管理にも携わっています。行く先々で地元の人と声をかけ合い、かつては踏み入れたこともなかったこの町にすっかり溶け込んでいます。
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知らない土地で一から自分を作り上げたい
かねてから「独立」のビジョンがあった田中さんは、多くの経験を積みたいと大阪のベンチャー企業に就職。約4年勤めた後、独立の場に選んだのが伊方町です。思い立ったら即行動!の田中さんに、まちづくり担当者は「起業する前に協力隊制度を活用しては」と提案。「3年間で町の課題や魅力を知り、人と親しんで事業の土台を築けば、任期を終えてもここで自立できる」と考え、情報とバックアップが得られる協力隊制度が田中さんの情熱を支えることになりました。
事業の柱は環境を生かしたキャンプ場作り。田中さんが目を付けた場所は竹林で伐採が追い付かず、土地改良には多額の費用が必要でした。やめる決断をしたとき、町の人に「温泉の裏はどう」と勧められ、草を刈ってみると平坦な土地はキャンプ場にもってこい。2021年8月、オープン間もなく温泉が火事という災難に見舞われましたが、翌年4月の温泉再開に合わせてキャンプ場も試験オープン。12月までに延べ656組が利用し、引き続き無料開放で営業しています。「心折れることもあるけど、いつも人が助けてくれた。竹の伐採も土地探しも草刈りも、一人でやったことは一つもありません。全部町の人の助言や協力のおかげ」とタフな笑顔がはじけます。 -
成功事例が町を変える
成功事例が町を変える
手伝いも行事も飲み会も「誘われたら参加」がモットーの田中さん、人の輪はどんどん広がっていきました。「けんちゃんたこ焼き」は、町の人の「関西人はたこ焼きうまいやろ」の一言に、焼いてふるまったのが始まり。「おいしい!出店しなさい」と勧められ、今では町のどこで出店しても人が集まるたこ焼き店に。「1年ほどたこ焼き店主をしてみて、この土地ならではの課題が見えてきました。飲む文化は盛んなのに店が少ない。立地や交通の便が悪く固定店は難しい。なら店が移動する出張居酒屋はどうだと」。2カ月間レンタルのキッチンカーを試して手ごたえを感じ、マイキッチンカーを注文。任期中にキッチンカー居酒屋を始める計画です。「都会の人の『田舎は稼げない』イメージを払拭するいいモデルになりたい。やりたいことで生活できる例が見えたら移住者は増える」。その成功例を目指し、ゆくゆくは移住を考える人への対応や手助けもしたいと考えています。
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「やりたいこと」に向き合ってみて
やりたいこと、若いうちは自分のやりたいことを思い切ってやってみるといいと思う。この会社に入りたい、こんな仕事をしたいという自分の気持ちに向き合ってほしいです。就職することだけにこだわり過ぎて惰性で仕事を選ぶと、後がしんどくなりそう。人生の長い時間を費やすんだから、いやいや働くのはもったいない。楽な仕事はないけど、自分が選んだことなら頑張れる。チャレンジして努力して、やっぱり「違う」と思ったら、やり直したらいい。失敗も間違いも経験、無駄にはならないと思います。
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小さな町で温かい人たちと
松本綾乃さん(25)は、来日する外国人をサポートしたいと、東京で教育関係の企業に就職。1年間勤めた後、2021年6月に愛媛県で一番小さな町、松野町の地域おこし協力隊に入隊しました。松野町蕨生に移住し、道の駅「虹の森公園まつの」の業務やイベント運営、広報紙作成などに取り組んでいます。新しい環境や仕事にも慣れ、任期3年の折り返し地点の今、これからの松野町と自分の関わりについて思いを巡らせます。
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町民の一人として参加したい
「人と人が近いところで働きたい」と移住促進サイトを閲覧。人も風景も印象的だった松野町の相談会に参加しました。「協力隊担当の『よく考えて自分に合う町を探しなさい』という親身な対応に心を打たれ、この町に移住を決めました」。一人で引っ越してきた日には「ここで本当にやっていけるのか」と心細さもありましたが、人間関係が希薄な都会とは対照的。互いが助け合い、外から来た自分にも関心を持って接してくれるこの町で、とまどいが安心感に代わるのに時間はかかりませんでした。「縁もゆかりもない私を見守り、家族のように親しくしてくれる。私もその人たちの、この町の役に立ちたい。そんな生き方がいいなと感じています」。
現在は道の駅での仕事やイベント運営などを中心に活動。子どもたちと作った「つるし雛」(※写真)を飾り、森の国文化祭では町の復元写真を展示、「おかあさんレストラン」の手伝いと、バイタリティーと行動力がフル稼働。高齢者の運動不足解消を目指す「毎日体操」の普及促進にも関わっています。「みんな松野が大好きで、集落全体が大家族のよう。地域の人たちがやることには、私も仕事ではなく町民の一人として参加していきたいです」。 -
地元の宝を町の人のために
地元の宝を町の人のために
移住する場所や目的を絞らず各地の情報を見ていて、気になるところのほとんどが四国だったという松本さん。愛媛にこだわりも予備知識もありませんでしたが、今ではここ松野町がお気に入り。「山の緑や川の流れに心が和みます。町の人たちがこの川の良さを再確認できる何かができたらいいな」。道の駅で計画されている新展開とのコラボなど“松本綾乃構想”は膨らみつつあります。
「新しいことをするには思いや計画を伝えて意見を聞き、町のみなさんの協力を得ることが必須。活動のおかげで考えを言葉や形にすることが身についてきました」。やりたいことが見つかると、今やっていることとどうつなげるか、うまく合わせて相乗効果を出すにはどうすればよいかと考えるようになりました。協力隊の任期を終えても松野に住むことを軸に考えている松本さん。その成長と活躍を、この町の自然と人の温かさが見守っています。 -
今は未来につながっている
旅行関係の仕事がしたくて専門学校へ行き、旅行業務取扱管理者の資格を取りましたが、就職先では資格を生かす仕事に就くことはできませんでした。でも、松野町地域おこし協力隊の選考でその資格をかっていただきました。まだ資格を使える場はつくれていませんが、今すぐ役に立たなくても、長い目で見ると無駄なことはないように思います。以前の経験が違うステージで思わぬ力になることは珍しくありません。やってみる気持ちや経験は大事。そしてなにより、自分の心身や気持ちを大切にして動いてほしいです。